菜の花配達便 (1996)

私設郵便局をめぐる人と人、心と心のふれあいについて語ったハートウォーミング・コメディ。監督は、石山昭信。脚本はつかこうへいが自らの原作『菜の花郵便局』を下敷きに執筆し、撮影を森隆吉が担当している。主演は、西島秀俊と小松千春。16ミリからのブローアップ。

菜の花配達便 (1996)のあらすじ

つばめ警察署の田草川署長(西島秀俊)は、サラ金強盗事件をきっかけに20数年前の極秘任務を想い出す。それは、田草川がつばめ警察署に着任して最初の事件で、彼の任務はつばめが丘にある“菜の花配達局”なる私設郵便局を調査して、潰滅させることだった。身分を隠して街に潜入した田草川は、当時の立浪署長(阿藤快)の立てた、同じ街に住む水野百合子(小松千春)にラブレターを出すことで配達局を調査するという作戦を遂行しようとしたが、誰にも明るく優しい百合子に、本当に惚れてしまった。任務への忠誠心と彼女への気持ちの板挟みになった田草川は、やっとの思いで一通のラブレターを書き上げる。ところが、その字や文面の下手さ加減から、菜の花配達局の局員たちは彼の手紙を配達するのをやめてしまった。それを知った田草川は、私文書守秘義務に違反したと局員たちに怒りをぶつけたが、それは彼らがこの手紙では彼女の気持ちをつかむことができないと憂慮した末のことだったと分かる。どうせ配達するのならうまくいって欲しいというのが局員たちの気持ちなのだ。彼らの真意を知った田草川は、局員たちからラブレターの書き方を指導され、心温まる手紙を書き上げる。しかし、田草川のラブレターが百合子に配達されたころ、配達局は田草川の手紙の守秘義務違反の証拠をつかんだ立浪によって、閉鎖へと追い込まれてしまった。田草川は、その後引っ越してしまった百合子に会うことも叶わず、月日だけが流れた。配達局事件を想い出した田草川は、今のつばめが丘の街に、配達局の人たちが大切にしたいと願っていた心と心のふれあいが、今も息づいていることをふと感じていた。

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