医学上、自分が実は男であったことを知らされた女と、韓国と日本のハーフの男という、自らのアイデンティティーについて悩み、彷徨するふたりの人間を中心に展開されるドラマ。監督は、高橋伴明。原作は花村萬月の同名小説で、これを鹿水晶子と剣山象(高橋監督のペンネーム)のふたりが脚色。撮影は長田勇市。主演は、大沢逸美と白竜。タイトルのセラフィムとは、熾天使、即ち九天使の最上位、最高の愛の焔の所持者のことをさす。R指定。
出演:大沢逸美、白竜、西島秀俊、國村隼、石橋蓮司、森崎めぐみ
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セラフィムの夜 (1996)のあらすじ
美大時代に所属していた剣道部の練習に顔を出した涼子(大沢逸美)は、そこで後輩の博之(西島秀俊)と再会するが、彼の強引な誘いでアトリエを訪ねた涼子は、博之が涼子の姿を想像してはヌード絵を描いている変質的な青年であることを知る。憤慨した涼子は、そこで博之の異母兄弟で韓国人とのハーフの右翼団体幹部・辰夫(白竜)と出会った。博之と違って理性的な辰夫に涼子は魅力を感じたが、博之はそんな兄を「日本人のなりそこね」と罵るのだった。
それからしばらくして、涼子は医者から“睾丸性女性化症候群”で、性的には男であるとの診断を受ける。それを知った博之は、涼子が例え男でも両性具有者でも愛することができると涼子を抱くが、涼子は博之を刺し殺してしまった。博之の死を知った辰夫は死体を庭に埋めると、涼子とふたりで韓国に逃亡を図るのだった。
ところがそんなふたりの前に、辰夫の右翼団体から雇われた殺し屋・金(國村隼)が現れる。自らも在日韓国人である金は、日本人になったり韓国人に戻ろうとしたりする辰夫が許せなくて仕方がない。金に涼子が実は男であることを告げられた辰夫は、苦悩のあまり涼子に冷たくあたってしまった。辰夫にダメージを与えることに成功した金は、自分がいつの間にか涼子にひかれていることに気づく。従姉妹の売春婦・崔(森崎めぐみ)に連れられて生みの母を訪ねた辰夫は、「ここはお前の故郷ではない」と母から拒絶された。行き場を失った辰夫は、彼の後を追って来た涼子の目の前で金と決着をつけようとする。激しい戦いの末、ふたりはともに命を落とし、韓国の空の下、涼子は辰夫と金の遺体をいつまでも抱き続けていた。
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